投手の指標として分かりやすく有名なものとして、防御率やWHIPなど様々あります。
これらの多くは結果に着目した指標であり、投手の特徴や能力を数値化するのに優れています。
しかし、野手と違い投手の大事な要素として酷使度(疲労度)があります。登板過多になると投手の故障のリスクが上がります。
この酷使度を見る指標としてPAPとRAPというものがあり、今回はこの2つの指標について紹介していきます。
- PAP(Pitcher Abuse Point)の特徴と問題点
- RAP(Reliever Abuse Point)の特徴と問題点
PAP(Pitcher Abuse Point)
PAPとは
2000年ごろにアメリカで考えられた野球の指標の一つで、先発投手の酷使度を表すと言われています。
PAPは下記の計算式で求められます。
PAP = (球数 – 100)の3乗
問題点
PAPの問題点としては、
①元々MLBで発明された指標で、MLBは中4日がNPBは中6日が主流のためそもそもそのまま定数100を用いていいのか疑問がある
②上記に近いが、登板間隔は考慮されていない
③一試合で大きく150球など100球を大きく超えた球数があるとPAPは跳ね上がる
などが挙げられます。
例を挙げてみてみると
【例1】
中4日で1シーズンローテーションを守り毎回100球ちょうど投げたとすると、たとえいくら登板しても100球まではPAPは0となるので、この投手はシーズンのPAPも0となります。
【例2】
A投手が中6日で10試合に登板し全て110球投げたとします。
すると1試合当たりのPAPは(110-100)^3となり1,000となります。これが、10試合なので、1,000×10となりPAPは10,000となります。
B投手は1試合のみに登板し125球投げたとします。
この時のPAPは(125-100)^3となり25の3乗なのでPAPは15,625となります。
この二人の投手をPAPだけで比べるとB投手の方が酷使されているとなるため疑問が生じます。
このように、登板間隔や登板数などの問題点が生じるため、できるだけ近い登板数、登板間隔の投手と比べる必要があります。
目安
PAP 100,000以上:故障のリスクがある
PAP 200,000以上:いつ故障してもおかしくない
おおよその目安ですがこのようになります。
RAP(Reliever Abuse Point)
RAPとは
野球の指標の1つで連投に着目した指標であり、中継ぎ投手の酷使度を表すと言われています。
球数に応じて1pt加算され、2連投の場合はptが2倍、3連投ならptが3倍とし合計していきます。
計算式は下記の通りになります。
RAP=(1連投の球数×1) +( 2連投の球数×2)+(3連投の球数×3)……
問題点
RAPの問題点としては
①ブルペンで肩を作っても登板しなかったら加算されない
②連投は加味されるが、登板間隔は加味されない
などが挙げられます。
②について少しわかりにくいので、例を挙げてみてみると
【例】登板間隔を考慮されない
A投手は2連投したのち、中1日空けて3連投しました。登板した5試合の球数はすべて10球でした。
この場合、RAP=10+10*2+10+10*2+10*3=90となります。
B投手もA投手と同じように2連投したのち3連投し、登板した5試合の球数はすべて10球でした。しかし、B投手の場合、2連投したあと中5日空けての登板となりました。
この場合もRAP=RAP=10+10*2+10+10*2+10*3=90となります。
このように、登板間隔が考慮されないので上記投手は同じRAPになってしまいます。
目安
RAPの目安は実働1年目(通算イニング30以下)の選手とそれ以外に分けて考えます。
【通常】
RAP 1000:注意
RAP 1200:警戒
RAP 1400:危険
RAP 1700:非常に危険
【実働1年目の場合(通算イニング30以下】
RAP 1000:警戒
RAP 1200:危険
RAP 1400:非常に危険
まとめ
【PAP(Pitcher Abuse Point)】
・先発投手度の酷使度を表す指標
・計算式は PAP = (球数 – 100)^3
・10万越えで故障リスク、20万越えでいつ故障してもおかしくないレベルと言われる
・問題点としては、
①中4日が主流のMLBで開発されたため球数100が基準となるところ
②登板間隔が考慮されない
③3乗するので1試合当たりのウェイトが大きくなる
【RAP(Reliever Abuse Point)】
・中継ぎ投手の酷使度を表す指標
・計算式は、RAP=(1連投の球数×1) +( 2連投の球数×2)+(3連投の球数×3)……
・1000越えで注意領域、1700越えで非常に危険となる。また、実働1年目の場合、1000越えで警戒領域、1400越えで非常に危険となる。
・問題点としては、
①ブルペンでの準備は考慮されない
②登板間隔は考慮されない
いかがでしたか。
今回は、数値化が難しい酷使度を見る指標を紹介しました。
問題点も多い指標ではありますが、酷使度を数値化できる数少ない指標であり興味深いです。
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